映画・演劇など文化活動を通じて思想宣伝に躍起となっている日本共産党は、うたごえ実行委員会(関鑑子委員長)を中心に、2年余りをかけて、歌劇「沖縄」を制作、全国主要都市で公演を続けている。
「70年安保闘争の有力な武器」として「反米・沖縄返還闘争を強調する」という表向きの目的以外に、“党活動の有力な資金源” としようという狙いをもっているとも言われており、注目されている。
うたごえ実行委員会が音頭とり
歌劇「沖縄」は、「うたごえ20年の成果を勝ち取るとともに、70年に向けて、沖縄の即時無条件全面返還と安保廃棄を勝ち取る強大な武器とする」ことを目的として制作された。
もともと “うたごえ運動” が、日共が “みんなで、そろって歌をうたおう” というスローガンのもとに、労働組合やサークルを通じて、日共勢力の浸透を図ろうという狙いで始められたもの。
終戦後のすさんだ人心に巧みにつけこんで着々と勢力を広げ、今では加盟61団体にものぼっている。
もちろん、参加者のすべてが党員またはシンパというわけではないにしても、日共の資金源として重要な役割を果たしていると言われている。
こうした中で、(昭和)42年8月の第4回日本のうたごえ実行委員会で、「アメリカのベトナム侵略最前線基地としての沖縄を主題としたオペラをつくり、沖縄返還の戦いと、日本独立の戦いを明らかにしよう」という方針が打ち出され、43年6月完成を目指して、制作の呼びかけが行われた。
歌劇「沖縄」制作・上演実行委員会(代表者=関鑑子、屋良朝苗=沖縄政府主席、村山知義=劇作家)が結成され、制作資金1000万円のカンパ活動が展開された。
その後、カンパは800万円に訂正され、2年余りの遅れをみたものの、昨年12月に完成され、「1969年、日本のうたごえ祭典」で試演にこぎつけた。
本年に入って、4月2日の岐阜市民会館を皮切りに、6月29日、仙台市公会堂まで、25都市で公演が続けられてきた。
歌劇「沖縄」の内容が、沖縄・伊江島における基地反対、土地接収反対を素材にしたものであり、反米・反安保思想で一貫していることは当然だが、その制作、上演運動が終始、日共を中心に推進されていることが、最大の特徴と言えよう。
実行委員会には、うたごえ実行委をはじめ、労音、統一劇場、民青中央音楽院など、日共翼下の団体が加盟している。
出演者も、中央合唱団、新星日本交響楽団(44年6月、民青同盟員を中心に結成、約70名)、京都市交響楽団(蜷川[虎三・京都府]知事、富井[清・京都]市長の援助を受けている)のほか、外山雄三(作曲・指揮者)、守屋博之(関西合唱団常任指揮者)、井上頼豊(中央合唱団指揮者・セロ奏者)といった一流音楽家が指導している。
さらに賛同者、支持者としては、石垣綾子(評論家)、宇野重吉(民芸)、小原安正(ギター演奏家)、木下順二(劇作家)、谷桃子(バレリーナ)、滝沢修(俳優)、蜷川虎三(京都府知事)、福島要三(日本芸術会議会員)、堀江邑一(経済学者)、美濃部亮吉(東京都知事)、宗像誠也(教育学者)、柳田謙十郎(哲学者)など、48名が名を連ねているが、このうち28名(58.3パーセント)が日共党員、16名(33.3パーセント)が同調者と見られている。
とくに美濃部知事は、「沖縄が本来、日本の一県でありながら、今日まで自治体としての形式すら備えていないことは、日本国民の自治が、本質において大きな欠陥をもっているというべきだと、私は考えます。皆さんがつくる歌劇・沖縄は、本質をきわめて鋭く表現しています。この歌劇が、沖縄を取り戻し、明るい日本をつくる力として、東京をはじめ、全国での公演の成功を心から期待しています」- という賛辞を寄せている。
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