藤本洋「多彩な選曲、新展開する“うたごえ運動”」
うたごえ運動は、今年の2月に全国協議会第7回総会を開き、新方針を決定しました。
ここには、現在の国民とわが党が目指す日本文化全体の民主的発展という思想・文化闘争の今日の段階における、うたごえ運動の課題が明らかにされています。
それを一口で言うと、もっともっと大衆の健全な文化的要求に積極的に、しかも親切に応えるということです。
その内容は、第一に、今までのものに加えて、選曲の幅を思い切って広げ、明らかに反動的・退廃的と誰もが認めるうた以外のもの、多少とも進歩性、大衆性、民族性をもつすべてのうたをとりあげて普及するということ。
第二に、普及の対象を思い切って広げること。
第三に、うたのサークルを全国の町、団地、農山漁村、職場、学校に無数に組織すること。
第四に、サークルの自主的・民主的運営を徹底して守り、うた以外の多様な要求にも応えていくこと。
第五に、活動家の音楽的・理論的学習を強めていくことなどです...
また、26年に及ぶ、うたごえ運動に対する党の援助と指導によって、党員活動家が音楽要求に応えていける力量を蓄積しており、ここにわが党の文化運動における、他党の追随を許さない優位性がある、と言うことができます。
人は誰でも健康な文化的要求をもっています。
退廃的な文化が氾濫している今日、とくにこの要求が強く出ています。
ですから、これに応えるのが、うたごえ運動をすすめている私たちの責任であります。
うたを押し付けるのではなくて、要求に応えることです。
そのためにも、これまでのものに加えて思い切って選曲の幅を広げ、多様化している音楽要求に応えるということ、徹底した自主的・民主的運営を守っていくことで、私たち党員が、これに性急な「階級性」などを要求することは、百害あって一利なしです。
私たちが大衆の要求に徹底的に奉仕し、そのなかで信頼を勝ち得てこそ、やはり、共産党は私たちの党だ、ということになります...
これらは成果の一部ですが、いずれも、うたごえ運動の新方針に基づいて得られた成果であり、こういうなかで「うたごえ」のなかの党員たちは、活動の先頭に立ち、大衆の文化要求の実現に奉仕することによって、党への信頼を獲得し、独自の活動でも少なからぬ成果をあげています。
しかし、うたごえの新方針が出された当初には、「思い切って選曲の幅を広げること」ということや、「思い切って普及の対象を広げること」という方針に対して、「階級性、革命性が骨ぬきになったのではないか」「うたごえの伝統が失われたのではないか」などという意見や戸惑いが古い活動家の一部にはありましたが、実践が進むなかで、次第にこれらが新しい確信へと変化しています。
革命的・民主的文化芸術はもちろん今後も大切にされなければなりませんが、現在の文化運動の任務は、日本の文化全体の民主的発展ですし、またうたごえの目的は、平和で健康なうたを全国民に広げることです。
このような点から見ると、大衆の文化要求に対する我々の視野は、まだまだ狭いと言わざるを得ません。
最後に、うたごえ運動はいま、新しい活況を見せ始めていますが、さらに全国の職場、学園、町、団地、農山漁村にくまなく網の目のようにサークルを組織していくことによって、真実とヒューマニズム、民主主義と平和を愛する気分、感情、思考 ― 世論を広げ、昨日、宮本(顕治)委員長が述べられた、国民の99パーセント以上を革新統一に結集する課題に応えるような、うたごえの普及活動をすすめていきたいと思います。
また、そういう中で、党員活動家としての私たちの独自の任務も遂行していきたいと思います。
※出典:「前衛」(日本共産党中央委員会理論政治誌)1974年12月増刊号-日本共産党全国活動者会議(1974年10月22~24日)特集